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2013年5月29日勉強会認知症医療

第109回日本精神神経学会学術総会 -その3-

第109回日本精神神経学会学術総会 -その2-の続きです。

 第3日目の「認知症3(ポスター)」は、明日の治療にすぐに役立つような発表はありませんでした。

 「神経画像・動物モデル・基礎研究(ポスター)」では、
聖マリアンナ医科大学 免疫学・病害動物学の藤原成芳先生の
「ヒトiPS細胞から誘導した神経細胞移植による認知機能改善効果の検討」
という発表が目を引きました。

 マウスを使った基礎研究ですが、アルツハイマー型認知症と似た症状を示すように遺伝子組み換えを行ったマウスに、理化学研究所から取り寄せたヒトiPS細胞を神経細胞に分化させたものを、海馬に注入し移植したそうです。このマウスを水槽で泳がせてゴールまでたどり着くまでの時間を計測したところ、移植しないマウスに比べて短時間でゴールにたどり着けるようになったという報告です。

第109回日本精神神経学会学術総会6.jpg 「記者」という腕章を付けた人から藤原先生が質問を受けていたり、写真を撮られたりして、このポスターの前は賑わっていました。藤原先生によると、マウスの頭蓋骨に穴を開けてヒトiPS細胞を神経細胞に分化させたものを海馬に注入したそうで、今後ヒトへの応用には数多くの壁があるだろうとのことでした。

 それでも「ヒトiPS細胞を使った認知症治療」が将来可能になるとすれば、この方法論になるのだろうと思います。認知症のサルにこのような方法でヒトiPS細胞を分化させた神経細胞を移植して、認知機能が確実に上がるような研究まで速く進めて欲しいものです。認知症の治療薬の開発は、現在すっかり行き詰まってきてしまっていますので、私はiPS細胞に期待しています。

 ポスターは紙にプリントしてボードに貼って発表しますが、このポスターは布にプリントしていました。布ならば大きく畳んでトランクに入れてくればシワにもならないしいいですね。初めて見ました。

医局Y.M

第109回日本精神神経学会学術総会 -その1-から読む。
 

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